各省、自治区、直轄市及び新疆生産建設兵団の市場監督管理局(庁、委)へ:
「標準必須特許に関する独占禁止ガイドライン」は、2024年8月26日に開催された市場監督管理総局第22回局務会議で可決されたため、ここに印刷?配布するが、現実の状況を踏まえて、広報と徹底実施を行うよう望んでいる。
市場監督管理総局
2024年11月4日
標準必須特許に関する独占禁止ガイドライン
第一章 総則
第一条 ガイドラインの目的と根拠
標準必須特許の濫用によって競争を排除、制限する行為を予防と制止し、市場における公平な競争を保護し、革新を奨励し、経済運営の効率を高め、消費者の利益と社会公共利益を擁護するため、「中華人民共和国独占禁止法」(以下、「独占禁止法」と略称)、「中華人民共和国標準化法」、「中華人民共和国特許法」と「知的財産権の濫用によって競争を排除?制限する行為の禁止に関する規定」、「国務院独占禁止委員会による知的財産権分野に関する独占禁止ガイドライン」などの法律法規、規則とガイドラインの規定に基づき、本ガイドラインを制定する。
第二条 関連概念
標準必須特許とは、標準を実施するために必要不可欠な特許をいう。
標準必須特許権者及び関連権利者とは、標準必須特許権を享有する事業者、または標準必須特許の実施を他人にライセンスする権利を有する事業者をいう。本ガイドラインでは、以下、標準必須特許権者と総称する。
標準の実施者とは、標準を実施する事業者をいう。
第三条 分析の原則
標準必須特許の濫用によって競争を排除、制限する行為に該当するか否かの判断は、「独占禁止法」に基づき、以下に掲げる基本原則に従って行われる:
(一)「独占禁止法」の規定に基づき、知的財産権の濫用によって競争を排除、制限する行為と同一の分析手法を採用する。
(二)知的財産権の保護と市場における公平な競争の維持を両立させる。
(三)標準必須特許権者と標準の実施者の利益をより良くバランスさせる。
(四)標準の制定と実施過程における、標準必須特許に関する情報開示、ライセンスの許諾、ライセンス交渉などの状況を十分に考慮する。
第四条 関連市場
通常、標準必須特許に関わる関連商品市場と関連地域市場を定義することには、「独占禁止法」、「国務院独占禁止委員会による関連市場の定義に関するガイドライン」及び「知的財産権の濫用によって競争を排除?制限する行為の禁止に関する規定」に規定される一般原則に従う必要があり、同時に標準必須特許の特徴を考慮し、個別の事案を踏まえて具体的な分析を行う必要がある。
(一)関連商品市場
標準必須特許に関わる関連商品市場を定義することには、代替分析方法が採用される。具体的な個別の事案において、標準必須特許に関わる関連商品市場は、主に技術市場と、標準の実施に関わる製品やサービスの市場である。その中で、技術市場は、異なる標準の間、異なる標準必須特許の間、標準必須特許と非標準必須特許の間及び標準必須特許と非特許技術の間などに密接な代替関係があるか否かという点から需要代替分析を行うことができる。必要に応じて、標準と標準必須特許の供給などの面から供給代替分析を同時に行うことができる。
(二)関連地域市場
標準必須特許に関わる関連地域市場を定義することには、同様に代替分析方法が採用される。標準必須特許に関わるライセンスが複数の国と地域をカバーする場合、個別の事案における関連地域市場を定義することには、異なる国と地域における標準実施、特許権保護などの地域的特徴などの要素を総合的に考慮する必要がある。
標準必須特許に関わる独占契約、市場支配的地位の濫用事件を調査、及び事業者の結合行為に対する独占禁止審査を行う場合、通常、関連市場を定義する必要があるが、関連市場の定義に対する実際の需要が独占事件の種類によって異なっているため、それぞれの事件の状況を踏まえて、重点を調整しなければならない。
第五条 事前と進行中の監督管理の強化
標準の制定と実施、パテントプールの管理または運営及び標準必須特許のライセンス過程において、標準制定団体、パテントプールの管理または運営団体、標準必須特許権者、標準の実施者などの事業者は、独占禁止コンプライアンスの構築を強化し、独占リスクを防止しなければならず、競争の排除、制限リスクが存在する可能性があると気づいた場合、自発的に独占禁止執法機関に関連状況を報告し、監督?指導を受けることができる。
競争の排除、制限のリスクが存在し、または独占的行為が疑われる場合、独占禁止執法機関は、注意喚起、面談?是正などの手段を通じて、事前と進行中の監督管理を強化し、標準制定団体、パテントプールの管理または運営団体、標準必須特許権者、標準の実施者などの事業者が、改善措置を提起し、関連問題の予防、是正を着実に実施するよう要求することができる。独占禁止執法機関が事前と進行中の監督管理措置を講じることは、独占的行為に対する調査?処理に影響を与えない。
競争の排除、制限のリスクが存在し、または独占的行為が疑われる場合、いかなる機関または個人も独占禁止執法機関に告発する権利を有する。
第二章 標準必須特許に関わる情報開示、ライセンスの許諾及び誠実交渉
独占禁止執法機関は、標準必須特許権者が標準必須特許に関する情報を適時に十分に開示し、公平?合理的?非差別的なライセンスの許諾をし、及び標準の実施者と誠実なライセンス交渉を行うよう奨励する。上記の良好な行為は、標準制定と実施の効率の向上、市場の公平な競争秩序の維持、技術革新と産業発展の促進に役立つ。上記の良好な行為に従わなければ、必然的に独占禁止法違反につながるわけではないが、競争排除、制限のリスクを高めるおそれがある。
第六条 標準必須特許の情報開示
標準制定団体の規定に従い、標準の制定?改正に参画する事業者は、標準の制定?改正のいかなる段階においても、その所有する及び知っている必須特許を適時に十分に開示し、同時に相応の証明資料を提供する必要がある。
標準の制定?改正に参画していない事業者は、標準制定団体の規定に従い、標準の制定?改正のいかなる段階においても、その所有する及び知っている必須特許を開示し、同時に相応の証明資料を提供することができる。
具体的な個別の事案において、事業者が標準制定団体の規定に従って特許情報を適時に十分に開示せず、または特許権を明確に放棄しているのに、標準の実施者に特許権を主張することは、その行為が関連市場における市場競争に排除、制限の影響を与えるか否かを認定する上で重要な考慮要素である。
第七条 標準必須特許のライセンスの許諾
公平?合理的?非差別的という原則は、標準必須特許権者と標準の実施者が標準必須特許のライセンス交渉を行う際に遵守しなければならない重要な原則として、国内外の標準制定団体によって認識されるとともに広く採用されており、知的財産権政策の重要な内容となっている。
標準制定団体の規定に従い、標準の制定?改正に参画する特許権者または特許出願人は、特許実施ライセンスの許諾を明確にしなければならず、公平?合理的?非差別的という原則に基づき、他の事業者が当該標準を実施するときにその特許の無償または有償での使用をライセンスすることに同意する。
公平?合理的?非差別的という原則に基づきライセンスの許諾が行われた特許については、標準必須特許権者が当該特許を譲渡するとき、事前に譲受人に当該特許の実施ライセンス許諾の内容を伝え、譲受人が当該特許の実施ライセンス許諾に制約を受けることに同意すること、すなわち、標準必須特許ライセンスの許諾が譲受人にも同等の効力を備えることを保証しなければならない。
具体的な個別の事案において、標準必須特許権者またはその譲受人が公平?合理的?非差別的な許諾に違反しているか否かは、不公平な高値でのライセンス、正当な理由のないライセンス拒否、抱合わせ販売、その他の不合理な取引条件の付加、または差別待遇の実施など具体的な独占行為を認定する上で重要な考慮要素である。
第八条 標準必須特許の誠実交渉
標準必須特許の誠実交渉は、公平?合理的?非差別的という原則を履行する具体的な表現である。標準必須特許権者と標準の実施者の間では、公平?合理的?非差別的なライセンス条件を達成するために、標準必須特許ライセンスの料率、数量、期限などのライセンス条件について誠実に交渉を展開しなければならない。誠実交渉には、以下に掲げる手順と要件が含まれるが、これらに限定されない:
(一)標準必須特許権者は、標準の実施者に対して明確なライセンス交渉の要約を提起しなければならず、通常、標準必須特許リスト、合理的な数量の標準必須特許と標準の対照表、ライセンス料率の算定方法及び根拠、合理的応答期限などの具体的な内容を含む。
(二)標準の実施者は、合理的期限内にライセンスを獲得することに対し誠実な意思を表明しなければならず、すなわち、悪意のある遅延、正当な理由のないライセンス交渉の拒否などの状況がないこと。
(三)標準必須特許権者は、その作成した公平?合理的?非差別的な許諾に適合するライセンス条件を提起しなければならず、主にライセンス料率の算定方法及び合理的な理由、標準必須特許の保護満了期間及び譲渡の情況など、ライセンスに直接関連する必要な情報と実際の情況を含む。
(四)標準の実施者が、合理的な期間内にライセンス条件を受入れなければならず、受入れない場合、合理的な期間内に、公平?合理的?非差別的という原則に適合しているライセンス条件案を提起しなければならない。
具体的な個別の事案において、交渉の過程と内容を全面的に評価しなければならない。標準必須特許権者と標準の実施者はいずれも、誠実交渉の義務を果たしたことを証明しなければならない。標準実施者による誠実な意思の表明は、交渉過程において特許の必要性、有効性などに対して異議を申し立てる権利に影響を与えない。
第三章 標準必須特許に関わる独占契約
標準必須特許に関わる独占契約を認定する場合、「独占禁止法」及び「独占契約の禁止に関する規定」、「知的財産権の濫用によって競争を排除?制限する行為の禁止に関する規定」などの関連規定を適用する。
第九条 標準の制定と実施過程における独占契約
標準の制定と実施の過程において、事業者間で独占契約を締結することで、競争を排除、制限する可能性がある場合、具体的な分析を行う際に以下に掲げる状況を考慮することができる:
(一)その他の特定事業者を標準制定参画から排除する正当な理由がないか否か。
(二)その他の特定事業者を関連計画から排除する正当な理由がないか否か。
(三)その他の競合する基準を実施しないことを約定する正当な理由がないか否か。
(四)特定の標準の実施者が標準に基づき試験実施、認証取得などの標準実施活動を制限する正当な理由がないか否か。
(五)その他の考慮する必要がある状況。
標準制定団体またはその他の事業者は、標準制定と実施の過程において、標準必須特許権者を組織して独占契約を締結する、または標準必須特許権者が独占契約を締結するために実質的な支援を提供してはならない。
第十条 標準必須パテントプールに関わる独占契約
通常、パテントプールは、ライセンスなどの取引コストを削減し、ライセンスの効率を向上させることができる。しかし、標準必須特許権者間でパテントプールを利用して独占契約を締結することで、競争を排除、制限する可能性がある場合、具体的な分析を行う際に以下に掲げる状況を考慮することができる:
(一)標準必須特許権者は、パテントプールを利用して、価格、生産量、市場区分などの競争に関する機密情報を交換するか否か。
(二)パテントプールの管理または運営団体は、競合特許をパテントプールに組み入れるか否か。
(三)パテントプールの管理または運営団体は、標準必須特許権者が単独で特許をライセンスアウトすることを共同で制限するか否か。
(四)パテントプールの管理または運営団体は、標準必須特許権者を組織して独占契約を締結する、または標準必須特許権者が独占契約を締結するために実質的な支援を提供するか否か。
(五)その他の考慮する必要がある状況。
第十一条 標準必須特許に関わるその他の独占契約
上記の契約に加え、標準必須特許権者は特許権を濫用して他の種類の独占契約を締結することで、競争を排除、制限する可能性がある。具体的な分析を行う際には以下に掲げる状況を考慮することができる:
(一)標準の実施者の生産、販売に関わる標準必須特許製品の価格、数量、地域範囲または品質を制限するか否か。
(二)標準の実施者による競合技術開発を制限するか否か。
(三)独占契約に該当しうるその他の状況。
第四章 標準必須特許に関わる市場支配的地位の濫用行為
標準必須特許に関わる市場支配的地位の濫用行為を認定する場合、「独占禁止法」及び「市場支配的地位の濫用行為の禁止に関する規定」、「知的財産権の濫用によって競争を排除?制限する行為の禁止に関する規定」などの関連規定を適用する。通常、まず関連市場を定義し、標準必須特許権者のような事業者が関連市場において市場支配的地位にあるか否かを分析し、次に個別の事案の状況を踏まえて、市場支配的地位の濫用行為に該当するか否かを具体的に分析する必要がある。
第十二条 市場支配的地位の認定方法と考慮要素
標準必須特許権者のような事業者が関連市場において支配的地位にあるか否かを認定する場合、「独占禁止法」と「国務院独占禁止委員会による知的財産権分野に関する独占禁止ガイドライン」などの規定に基づき分析しなければならない。事業者が市場支配的地位にあると認定または推定するには、標準必須特許の特徴を結びつけて、以下に掲げる要素を具体的に考慮することができる:
(一)関連市場における標準必須特許権者の市場シェア、及び関連市場における競争状況。通常、標準そのものを置き換える標準が存在しない場合、これを否定するに十分な証拠がない限り、標準必須特許権者は、その保有する標準必須特許のライセンス市場において、全市場シェアを占めている。
(二)標準必須特許権者の、関連市場を支配する能力。主に、標準必須特許権者がライセンス料率や方式などのライセンス条件を決定する能力、その他の事業者の関連市場への参入を阻害し、それに影響を与える能力、及び標準の実施者が標準必須特許権者を制限する客観条件と実際の能力などを含む。
(三)下流市場の、標準必須特許に対する依存度。主に対応する標準の進化状況、代替性、変換コストなどを含む。
(四)他の特許権者の、ライセンス市場への参入の難易度。主に標準必須特許技術が置き換えられる可能性などを含む。
(五)標準必須特許権者の財務能力と技術条件などの、市場支配的地位の認定に関連するその他の要素。
第十三条 不公平に高額での標準必須特許ライセンス
通常、合理的なライセンス料によって、標準必須特許権者は、その研究開発への投資と技術革新に対する見返りの獲得を保障することができる。しかし、標準必須特許権者のような事業者は、その市場支配的地位を濫用し、標準必須特許を不公平に高額でライセンスするまたは標準必須特許が含まれる製品を販売することで、競争を排除、制限する可能性がある。具体的な分析を行う際には、以下に掲げる要素を考慮することができる:
(一)ライセンス双方は本ガイドラインの第二章に従って良好な行為を行っているか否か。
(二)ライセンス料は、比較可能な過去のライセンス料または他の事業者のライセンス料よりも著しく高いか否か。
(三)ライセンス交渉の過程において、期限切れ、無効の標準必須特許または非標準必須特許に対してライセンス料を徴収すると主張しているか否か。
(四)標準必須特許権者のような事業者が、標準必須特許の数量、品質、価値の変化に応じてライセンス料を合理的に調整しているか否か。
(五)標準必須特許権者のような事業者が、非特許実施実体を通じて重複料金を徴収しているか否か。
第十四条 標準必須特許のライセンス拒否
通常、標準必須特許権者が標準制定団体の規則に従って公平?合理的?非差別的な許諾をした後、正当な理由がなければ、標準必須特許権者のような事業者は、ライセンスを獲得しようとする標準の実施者を拒否してはならない。そうしないと、市場競争に排除、制限の影響を与える可能性がある。具体的な分析を行う際には、以下に掲げる要素を考慮することができる:
(一)ライセンス双方は本ガイドラインの第二章に従って良好な行為を行っているか否か。
(二)標準の実施者に不良な信用記録がある、または事業状況の悪化などの、取引の安全に影響する状況が現れているか否か。
(三)不可抗力などの客観的な原因で標準必須特許のライセンスができないか否か。
(四)関連標準必須特許のライセンス拒否が市場競争と技術革新に与える影響。
(五)関連標準必須特許のライセンス拒否が消費者の利益または社会公共利益を損なうか否か。
第十五条 標準必須特許に関わる抱合わせ販売
通常、標準必須特許のライセンスをする際にパッケージライセンを行うことは、全体的な取引コストを削減し、標準実施の効率を向上させることができる。しかし、標準必須特許権者のような事業者は、その市場支配的地位を濫用し、正当な理由なく、ライセンス時に標準の実施者にパッケージライセンスを受けたり、非標準必須特許のライセンスを受けたりすること、またははその他の製品の購入を強制することで、競争を排除、制限する可能性がある。具体的な分析を行う際には、以下に掲げる要素を考慮することができる:
(一)ライセンス双方は本ガイドラインの第二章に従って良好な行為を行っているか否か。
(二)正当な業界慣行と取引習慣に適合しているか否か。
(三)技術上の合理性と必要性があるか否か。
(四)パッケージライセンスの分割が実行可能か否か、それが標準の実施者に不合理な標準実施コストをもたらすか否か。
(五)標準の実施者が、ライセンスの組み合わせまたは購入する製品を選択する自主性を有するか否か。
第十六条 標準必須特許に関わるその他の不合理な取引条件の付加
通常、標準必須特許のライセンス条件は、標準必須特許権者と標準の実施者の間の約定によって形成され、ライセンス双方の意思自治を十分に体現している。しかし、標準必須特許権者のような事業者は、その市場支配的地位を濫用し、正当な理由なく、標準必須特許ライセンスに不合理な取引条件を付加することで、競争を排除、制限する可能性がある。具体的な分析を行う際には、以下に掲げる要素を考慮することができる:
(一)ライセンス双方は本ガイドラインの第二章に従って良好な行為を行っているか否か。
(二)標準必須特許ライセンスの前提条件として、無償または不合理な対価のリバースライセンスなどを使用するか否か。
(三)標準の実施者に合理的な対価の提供なしにクロスライセンスを強制的に要求しているか否か。
(四)標準の実施者がその標準必須特許の必要性、有効性などに異議を提起することを禁止しているか否か。
(五)標準の実施者が紛争解決の措置または地域を選択することを禁止または制限しているか否か。
(六)標準の実施者と第三者の取引を強制または禁止する、または標準の実施者と第三者との取引条件を制限しているか否か。
(七)標準の実施者による競合技術の開発を制限しているか否か。
(八)標準の実施者に、標準の実施と関係のない、関連する標準必須特許のライセンスと明らかに関連性に乏しい経営情報及び技術情報の提供または開示などの不合理な条件を要求することに合理的な理由が不足しているか否か。
第十七条 標準必須特許に関わる差別待遇
通常、標準必須特許のライセンス条件は、標準の実施者の実際状況、所在地域の取引習慣、経済発展レベルなどによって、ライセンス料、期間などの面で差異が現れることがある。しかし、標準必須特許権者は、その市場支配的地位を濫用し、正当な理由なく、条件が同じ標準の実施者に対し差別待遇を行うことで、競争を排除、制限する可能性がある。具体的な分析を行う際には、以下に掲げる要素を考慮することができる:
(一)ライセンス双方は本ガイドラインの第二章に従って良好な行為を行っているか否か。
(二)ライセンス交渉のタイミングと市場背景が大きく変化したかどうか。
(三)標準の実施者の条件が実質的に同一か否か。
(四)ライセンスの数量、地域、期間、使用範囲などのライセンス条件が実質的に同一か否か。
(五)標準必須特許のライセンス内容に存在する違いはライセンス双方が達成したその他のライセンス条件よりもたらされたものか否か。
(六)当該差別待遇が標準の実施者の市場競争への参加に顕著かつ不合理な影響を与えるか否か。
第十八条 標準必須特許に関わる救済措置の濫用行為
通常、標準必須特許権者は、法律に基づき、裁判所または関連部門に関連特許権使用禁止の判決、裁定または決定を請求する権利を持っている。しかし、標準必須特許権者のような事業者は、公平?合理的?非差別的という原則に違反し、誠実に交渉することなく、上記の救済措置を濫用し、標準の実施者にその不公平な高額またはその他の不合理な取引条件を受入れさせることで、競争を排除、制限するこ可能性がある。具体的な分析を行う際には、ライセンス双方が本ガイドライン第八条に従って誠実にライセンス交渉を行ったか否かを考慮しなければならず、同時に「国務院独占禁止委員会による知的財産権分野に関する独占禁止ガイドライン」に規定される、その他の要素を考慮することができる。
第五章 標準必須特許に関わる事業者結合
標準必須特許に関わる事業者結合に対する審査は、「独占禁止法」、「国務院による事業者結合の申告基準に関する規定」、「知的財産権の濫用によって競争を排除?制限する行為の禁止に関する規定」などの規定を適用する。
第十九条 標準必須特許に関わる事業者結合の申告
事業者間の標準必須特許に関わる取引は、事業者結合に該当しうるのである。標準必須特許に関わる取引が結合に該当するか否かの認定は、「独占禁止法」、「国務院独占禁止委員会による知的財産権分野に関する独占禁止ガイドライン」及び関連する独占禁止規則に基づき分析を行わなければならない。同時に、以下に掲げる要素を考慮することができる:
(一)標準必須特許の対象となる製品またはサービスが、独立した業務に該当するか否か、または独立して計算可能な売上高を生み出しているか否か。
(二)標準必須特許のライセンス方式と期間。
標準必須特許に関わる取引が事業者結合に該当し、「国務院による事業者結合の申告基準に関する規定」に規定される申告基準を満たしている場合、事業者は国務院独占禁止執法機関に事前に申告しなければならない。申告がない場合、結合を実施してはならない。
「国務院による事業者結合の申告基準に関する規定」によると、標準必須特許に関わる事業者結合が申告基準を満たしていないが、その事業者結合が競争を排除、制限する効果を有し、または有する可能性があると証明する証拠がある場合、国務院独占禁止執法機関は、事業者に申告を要求することができる。事業者が要求に従って申告していない場合、国務院独占禁止執法機関は法律に基づき調査しなければならない。事業者は、申告基準を満たしていない事業者結合について、自発的に国務院独占禁止執法機関に申告することができる。
第二十条 標準必須特許に関わる事業者結合の審査
標準必須特許に関わる取引が事業者結合の実質的な構成部分である場合、または取引目的の実現に重要な意義がある場合、事業者結合の審査過程において、「独占禁止法」に規定される要素を考慮するとともに、標準必須特許の特徴を考慮しなければならない。
標準必須特許に関わる制限的条件には、構造的条件、動作的条件、総合的条件が含まれる。標準必須特許に関わる制限的条件の付加は、一般的に、個別の事案の状況に応じて、事業者結合が競争を排除、制限する効果を有し、または有する可能性があることについて、提案された制限的条件を評価した上で決定される。その中で、当該事業者が標準必須特許を含む関連資産の分割を要求すること、公平?合理的?非差別的という原則に基づくライセンス許諾、抱合わせ販売の禁止などの行為及び標準必須特許の譲受人の行為に対する必要な制限などが含まれるが、それらに限定されない。
第六章 附則
第二十一条 ガイドラインの効力
本ガイドラインは、標準必須特許の分野における競争行動について一般的なガイダンスのみを行い、事業者及び独占禁止執法機関の参考に供するものとして、強制力を有するものではない。本ガイドラインに規定がない場合、「国務院独占禁止委員会による知的財産権分野に関する独占禁止ガイドライン」を参照することができる。
第二十二条 ガイドラインの解釈と実施
本ガイドラインは市場監督管理総局によって解釈され、公布日より実施されるものとする。